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例のドッグランのある公園に、門口は車で来ていた。
現場で見かけたレクサスの車があるので、直ぐに分かった。
……あ、出てきた。
ジャンヌを助手席から下ろして、悠々と歩いてくる長身のイケメン。
スーツではないけど、お洒落な柄パンと黒のニットジャケットがこれまたカッコいい。
てか、散歩にそれはないでしょ。
散歩なんだからジャージで充分のはず。
「来たな、豆子」
ペコを見るなり、顔をほころばせるところを見たら、やっぱりこの人、犬好きなんだ。
けれど、モフモフとかワシャワシャするわけでもなく、いきなり、
「Sit!」(おすわり)
「Wait!」(まて)
ペコに英語で躾を始めてしまった。
「いつも日本語で躾をしてるので止めてください! 戸惑ってしまうじゃないですか?」
せっかく覚えたのに。
「柴はお利口だから戸惑わないさ。それに犬は元々、母音の方が聞き取りやすい動物なんだから英語でやった方が良かったんだよ」
門口は、私の不安をよそに、
「Shake hand the other!」
英語でしつけを続けて、ペコの気持ちまで鷲掴みにしているようだった。
その証拠に、うちのペコは門口の足元でお座りと、お手を披露。
それを見た飼い主の私が抱く感情といったら、ひとつ。
―ージェラシー。
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