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試着して二人の前に御披露目すると、
「ホントに似合うわ、そのドレス! 真樹とは思えない! 上品!」
京子が、ベタ誉めしてくれるので照れ臭かった。
「それにお決めになります? リーズナブルなので是非このブラックフォーマルもご一緒に……」
「いりません!」
懲りずにオバサンスーツを売り付けようとする店員に、
「これでそれも精算して」
門口はドレスと着けていたパールのネックレスを指してカードを差し出していた。
え?
買ってくれる気?
「そんな、いいです!」
なに、このひと。
ドケチな性悪社長かと思ったのに、そうじゃないの?
「大したモンじゃねぇし。それに、これは貸しだから」
「貸し?」
意味がわからない。
「京子さんでしたっけ? ちょっと森山さんをお借りしてもいいですか? 」
「はいっ?!」
「どーぞどーぞ」と手を振る京子に会釈して、
門口は、ドレスを着たままの私の手を掴んで店を出る。
「こんな格好のままどこに連れて行く気なんですかっ?!」
なによ、これ?
映画?!
恋愛ドラマのワンシーン?!
「俺も用事があるって言ったじゃん、それに付き合えよ」
だから、それはどこ??
「お前は黙って頷いてればいいから」
ーーこの人の貸しはデカそうで怖い。
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