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「ここ、ホテルですよね?」
門口の車が停まったのは、高級ホテルの地下駐車場。
「そう」
「ここでなにかあるんですか?」
「下らない顔合わせ」
「……誰と誰の顔合わせですか?」
「いいからさっさと歩け」
「あ」
歩けと言われ足元を見たら、ドレスに不似合いなサンダルだった。
「立食パーティーとかですか? それならこの足じゃちょっと……」
「誰もお前の足元なんか見ないよ」
「でも」
「それに俺のこのカジュアルな格好を見ろ、パーティなら俺だってスーツ着てる」
ヅカヅカとホテルのロビーを歩く門口の顔は、なんかちょっと怖かった。
そして、その足はロビーからすぐのレストランへと入っていき、
「青、遅かったじゃないの??」
着物を着た夫人の前でピタリと止まった。
誰。このおばさん。
まさか、
「ご無沙汰してますね、母さん、ちょっとお痩せになったんじゃないですか?」
門口のママ?!
にしても、とても息子とは思えない口振り。
「嫌味なこと言わないの! それよりなんなの、あなたのその格好! 正装で来ないなんて相手の方に失礼でしょ?!」
おまけに、この展開……。
「お見合いする気なんてないから、こんな格好なんだろ?」
「写真だけで判断するなんて失礼にも程があるわ!会うだけ会ってとあれだけお願いしたのに……て、誰なの? その女性は」
やっと、私を見た門口ママの視線が非常に痛かった。
その視線から庇うように、門口が私の両肩を抱く。
「これ、俺の彼女」
やっぱりな展開ーー
私、俺様社長の彼女にさせられている。
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