毎年恒例苦痛な新年行事

1/3
前へ
/37ページ
次へ

毎年恒例苦痛な新年行事

毎年わざわざ初詣のために振袖を新調する。 理由は社内広報誌や業界誌に写真を載せるため。 「PIPIの水原涼子だ。大和撫子だな」 トミタ自動車本社工場内にある冨栄神社。 社外の人でも正月3ヶ日だけ参拝が許可されている。 颯人のご家族と時間を合わせて初詣をし、料亭でランチをとるのが恒例行事。 「涼子さん、颯人がまだ到着しないんだけど、連絡入ってない?」 いつも私からお伺いのLINEを送っての返信だったから、遅刻の連絡はない。 「入ってないです。シリコンバレーから結城くんが戻ってて、7年ぶりの再会だから朝方まで楽しんでいたんだと思います」 颯斗にLINE送りたくなく、ありがちな理由を伝えた。 「結城くんが帰国してたの!!知らなかったわ。あの子、そういう報告、私にしないから。お祖父様が会いたがってたのに」 天才結城をヒットハンティングしたいトミタ代表取締役会長。 中高生時代、かなりの金額を投資していた。 「遅れてすみません」 颯斗は待ち合わせ時間から15分遅刻で駆けつけた。 スーツと靴は極上品だったけど、顔色がかなり悪かった。 同窓会の後、天才結城と秀才藤島が家に押しかけ、やりたい放題だったのだと思う。 「結城くん、あちらの大学院卒業したら日本に戻ってくるわよね?もちろん、トミタに来てくれるのよね?」 「どうだろう……。GoogloでAIシステムの開発をしながらスタンフォード大学でMBA(経営学修士)とM.Eng.(工学修士)取得するって言ってたから、しばらくはシリコンバレーに居るんじゃないかな」 颯人の御両親も私の両親も、天才結城をかなり評価している。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

172人が本棚に入れています
本棚に追加