婚約破棄はしたくない side 冨田颯人

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『アイリンの現社長はリーダーシップが取れて臨機応変な対応が取れているが、息子の篤志くんは社長どころか役員にもなれないだろう。涼子ちゃんも良い子だが、広告代理店の受付嬢とファッション雑誌のモデルを仕事にしていて、トミタ次期社長夫人には相応しくない』 父親同士は無二の親友。 俺にとって、天才結城と秀才藤島みたいな腐れ縁のある幼稚園から小中高共に過ごした仲と聞いていた。 父から浴びせられた言葉に衝撃を受ける。 『坂野綾子と結婚した方がメリットがある。涼子ちゃんと上手くいってないんだろ?仕事柄出会いは多そうだから他に良い人ができたのかもしれない。坂野綾子と関係を深めてみたらどうだ?』 冨田家にとって涼子より天才坂野との婚姻の方がメリットが高いと切り捨てる。 物心がついた頃から家族ぐるみでの付き合いを重ねていたのに。 涼子と共に過ごした時間は長い。 無能な俺の側にいてくれ、励ましてくれた。 涼子に見放されたなら仕方がないが、俺からは彼女と別れたくない。 天才坂野の能力の高さには惹かれたが、人生を歩むパートナーは涼子しかいないと痛感する。
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