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さっきまで、余裕の表情をしていた男性天使の顔が曇った。
「言っておくけど、考え込むと記憶が思いだせなくなるぜ」
(ああ、だから大天使は私をここに派遣させたのか)
そして、記憶が思いだせなくなるのは、考え込むということを教えてもらった。
「うん、そうみたいね……でも、ここにはイヤな記憶ばかりがある」と私は言った。
靴がなくなったこと。
女子から嫉妬されていたこと。
声が出せなかったのでジェスチャーで伝えたら、みんなの前で担任に怒られたこと。
「良い記憶も、良くない記憶も、全て自分のものだ。」
男性天使は、そういうが私の考えは違っていた。
「いいの……忘れても。イヤな記憶って忘れた方がいいよ」と言って、私は少し下を向いた。
「大切にしろよ、イヤな記憶でも。自分自身も。」
「う、うん。」
「じゃ、行くぞ。」
そう言い、男性天使は校舎へ向かって歩き出した。
その大きな背中を見る。
(この人がサポートで良かったかもしれない)
私は、小走りで男性天使のあとを追いかけた。
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