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幽霊。
死者の霊を慰めるのも神殿関係者の仕事だが、ミノンは幽霊を見たことはない。
だから、あの発光体が幽霊とは断言できないが、時間帯からするとたぶん幽霊なのだろう。
(でも、いまのいままで見たことないわよね。わたしが気づかなかっただけ?)
熟考していると幽霊がミノンのほうを見た。
息を呑んだ。
(なんて綺麗なひと……)
孤児院や神殿施設へ慰問に訪れる舞台の俳優にも、こんな美しいひとはいなかった。
腰あたりまである長い髪。整った顔立ち、なによりも印象的なのは澄んだ青空を思わせる瞳である。
フィルの瞳が晴れた青空ならば、この幽霊の瞳はそれをもっと薄めて引き延ばした色だろうか。
いまにも消えてしまいそうな儚い印象。
不安定で弱々しくて、けれどぎゅっとこころを掴んで離さない、とんでもない美男子の幽霊だった。
(美人薄命って、男性にも使うんだったっけ? うん、でも、そんなかんじよね)
納得していると、幽霊は首を傾げた。
さらりと髪が頬を流れ、そのさまがなんとも艶やかでドキリとする。男のくせに、なんともけしからん色気。
「なぜ、おまえはそんな顔をしてるんだ。僕の顔になにかついているのか」
「幽霊ってしゃべるんだ」
「幽霊? 僕が?」
しまった。死んだ自覚がないタイプの幽霊だったらしい。
ミノンは慌てて考える。
しかし死者の魂を慰めた経験が皆無のため、方法がわからない。
わからないことは、とりあえずやってみるしかない。それがミノンの生き方だ。それはそれとして。
「とりあえず場を移しませんか? ほら、子どもが寝ている枕元でする話でもありませんし」
未だ寝台で眠っているフィルを指さすと、幽霊は神妙な顔をしてうなずきを返した。
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