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ふと目が覚めた。
室内は暗く、ミノンの感覚としても床についてからさほど時間が経過したとも思えない。もういちど横になって寝てしまってもよいのだけれど、なんとなく気になってしまったミノンは起き上がることにした。
むかしから、こういう予感は大事にしている。
孤児院でも、こんなふうになにかを感じたときは、決まって子どものうちの誰かが徘徊していたり、不安に駆られたのか泣いていたり。眠れない子に付き合って深夜の内緒話をするのがミノンの役割だったものだ。
感覚の鋭さ。なにかを感じ取る敏感さ。
そういったものがミノンにはあるようで、神殿職員が言うには、それもまた聖魔法のなせる異能。
(ご令嬢方に言わせれば、野生の感覚らしいけどね)
そしてミノンも我ながらそう思う。
そんな野生の勘を信じ、そっと部屋を出た。
まず向かったのはフィルの部屋である。孤児院時代の経験から考えると、フィルになにかがあったと考えるのが自然だったからだ。
扉に耳をつけて、中の音を探る。
しかし孤児院と違って、造りの良い分厚い扉は、そう易々と音を拾わせてはくれない。
仕方がないので小さくノック。
数回繰り返したのち、ゆっくりと扉を開いた。
寝台のあたりからは寝息が聞こえる。
フィル自身は眠っているようでとくにおかしなようすはない。
問題があるとすれば、その寝台の脇に誰かがいることであろう。
誰か――といっていいのかどうか。
だってそのひとはうっすらと光り、そしてうっすらと透けているのだから。
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