07 深夜の出会い

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 幽霊。  死者の霊を慰めるのも神殿関係者の仕事だが、ミノンは幽霊を見たことはない。  だから、あの発光体が幽霊とは断言できないが、時間帯からするとたぶん幽霊なのだろう。 (でも、いまのいままで見たことないわよね。わたしが気づかなかっただけ?)  熟考していると幽霊がミノンのほうを見た。  息を呑んだ。 (なんて綺麗なひと……)  孤児院や神殿施設へ慰問に訪れる舞台の俳優にも、こんな美しいひとはいなかった。  腰あたりまである長い髪。整った顔立ち、なによりも印象的なのは澄んだ青空を思わせる瞳である。  フィルの瞳が晴れた青空ならば、この幽霊の瞳はそれをもっと薄めて引き延ばした色だろうか。  いまにも消えてしまいそうな儚い印象。  不安定で弱々しくて、けれどぎゅっとこころを掴んで離さない、とんでもない美男子の幽霊だった。 (美人薄命って、男性にも使うんだったっけ? うん、でも、そんなかんじよね)  納得していると、幽霊は首を傾げた。  さらりと髪が頬を流れ、そのさまがなんとも(あで)やかでドキリとする。男のくせに、なんともけしからん色気。 「なぜ、おまえはそんな顔をしてるんだ。僕の顔になにかついているのか」 「幽霊ってしゃべるんだ」 「幽霊? 僕が?」  しまった。死んだ自覚がないタイプの幽霊だったらしい。  ミノンは慌てて考える。  しかし死者の魂を慰めた経験が皆無のため、方法がわからない。  わからないことは、とりあえずやってみるしかない。それがミノンの生き方だ。それはそれとして。 「とりあえず場を移しませんか? ほら、子どもが寝ている枕元でする話でもありませんし」  未だ寝台で眠っているフィルを指さすと、幽霊は神妙な顔をしてうなずきを返した。
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