集まったよ

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 月末、部長から急にSDGsに関する新チームを立ち上げるので適当に10人ほど見繕ってこいと指示があった。  うんざりだ。  部長ははっきりとは言わなかったが、ゴミ拾いボランティアのメンバー集めなのは判っている。  社内でそういう噂は流れていたし、そもそも僕に指示するのがその証拠だ。  僕が休日にボランティアでゴミ拾いをしているのは、それこそ社内の噂の種の小さな一粒だった。  でもうんざりだ。  この会社はそもそもSDGsなんかとは程遠い組織だ。  認定事業者として登録だけはしているが、面倒臭い書類を作っただけで実体なんかない。  本気で環境のことなんか考えていない、ゴミ捨てひとつ取ってもまるで出来ていない。  どれだけ注意書きを貼っても、見かけた時に何度となく注意しても、ゴミの分別がまともにできる社員なんかほとんどいない。  適当にゴミ箱に入れとけば、誰かがどうにかするだろうと思ってる奴らばかりだし、それ以前に、本当になーんも考えてもないアホな奴らも大勢いるのだ。  だが、仕事なので仕方がない。  簡単に集まるとは思わないが、僕は社内を歩き回った。  しかし噂は流れきっていて、本来の仕事の時間が割かれることを恐れる社員たちは、僕と目を合わそうとせず、逃げ隠れするばかりだ。  ふん!お前らなんかに頼むか!  自分のノルマのゴミ袋をいっぱいにする為に、こっそり既存のゴミ箱の中から袋にゴミを移しかねないような奴を選ぶわけないだろ!  お前なんか僕のmyトングでポイ!してやる!  僕は一人息巻いて社内を徘徊していたが、途中で妙なことに気付いた。  社員に交じって奇妙な人がいるのだ。  いや、ここにいるのだから従業員だろうが、酷く顔色が悪く、敗れた服を着ていたり、頭がボサボサだったり、一番びっくりしたのは頭にオノが刺さっている男を見た時だった。  さすがにそれで僕は気づいた。  今日、ハロウィンじゃん!  SDGs云々もその中のひとつだろうが、この会社はイベントごとが好きなのだ。  古い社屋を持った歴史のある会社のわりに、柔軟に面白いことを取り入れようとする姿勢だけは僕も気に入っている。  春夏秋冬なにかと社内イベントを立ち上げるし、ハロウィンに着ぐるみで出勤するのもOKになっている。  まあ、実際着ぐるみの人を見たことはないけれど、毎年ソフトなコスプレでやってくる社員は数名はいた。  しかし、今年はどうした?  やけに気合が入っているじゃないか。  血ノリつけたままお客さんには会えないだろうに。  しかし、僕が声をかけて快い反応をしてくれるのは、そんなコスプレの人達だった。  それで結局10人全員がコスプレ社員となったのだが別に文句はないだろう。  皆を部長指定の第13会議室に集めて、あとは部長が来るのを待つだけとなった。  少しして部長がやってくる。  部長は途端に怪訝な表情となった。  それはそうだろう、集まったのは皆、顔色の悪い死にきれない様子のハロウィンコスプレイヤーなのだから。 「おい」  急にこんな仕事を振ってきたのだ。  部長が怒りだそうが何を言い出そうが、僕は全く怖くなかった。  なんか文句あんのかという意味で、「何です?」と僕は応える。  部長は言う。 「誰もいないじゃないか」
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