え、そんなに?

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『取材協力 御坂直道』 作品のエンドロールに、そしてパンフレットに、私の名前が載っている。 あのときのあの彼が......。 大学の卒業制作として脚本を書き上げて、それが最優秀作品に選ばれて 更にいくつもの映画イベントで賞を取ったのだ。 そしてその脚本は俳優たちが手に取る一冊となり、映画撮影が始まった。 それが完成して劇場公開までたどり着けた。 私は関係者として試写会に招待されて観ていたが、もちろん公開初日には 映画館へと駆けつけた。 上映後は舞台挨拶が行われ、監督......天地日向、いや『あまち日向』が 壇上に立った。 彼は監督デビューにおいて『天地』を『あまち』と、ひらがなにしていた。 そして主演俳優と2人でのトークショーが、品川の単館......。 私たちが出会った映画館で、満席のなかで始まった。 客席には後方の席に真乃纏も来ていた。 出演した記念に監督にサインをもらう為に脚本を手に。 「実は今日、取材協力というか......この映画をつくるきっかけを 俺にくれた御坂さんと、それから真乃くんが観客席にいらしてて。 お二人、ちょっと出てきて話します?」 最前列の左端の席に座っていた私は......。 ティッシュで顔を覆い、首を振った。 泣き過ぎて、話すことはできなかった。 あのとき。 あの映画館で初めて会ったときの彼のように。 私も映画を観ながら、ひっそりと泣いて、上映後には声を上げて 泣いてしまったからだ。 「おいらはただの映画とライヴが好きな一般人なんで。 そんな高いとこ立てねえっすよーっ」   と、真乃が大声で言って、会場を沸かせた。  あんなに弱々しくも熱い闘志を抱いていた青年が......。 立派に映画監督になれたこと。 私の単独取材が無駄にならずに......。 別のカタチで実を結んだこと。   そして......。 監督は亡くなっても、その魂は受け継がれていったのを......この目で 見て取れたこと。 それらすべてに私は泣いていた。 「長生きしてよかったーっ!」 私は泣きながら叫んだ。 とてつもなくみっともなかったのに、観客は拍手喝采してくれた。 「え、そんなに?」 あまち監督が驚いて笑った。 ――完――
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