持ち込まれた難題

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 ネットのニュースを毎日隈なくチェックして、若い女の死体が発見されたという記事がないかとさがした。彼女は何者かに殺されてしまい――たとえば交通事故とかに遭って――、遺体を隠されたのではないかと。  が、そんな記事は見つからず、しかし同時にそれでほっとしてもいた。彼女がどこかで生きているんじゃないかと希望が持てて。  そうして気がつくと一年が経過していた。そんな折に入ったのが、例の電話なのであった。 「なるほど……」  顛末を聞き終えた先野は、わかりましたとうなずいた。 「さぞご心配でしょう……。誘拐されて監禁されているというのが、おおよその見立てではないでしょうかな……」 「ぼくもそう思います」  だから警察に駆け込んだのだが、あくまで可能性があるということであり、しかも一年も前から行方不明だとすれば、防犯カメラの映像だって残ってはいまい。捜索するにしても人員の動員は現実的ではないと判断されたのも致し方ないといえた。 「現状、枯橋さんがどんな状況に置かれているかは想像するしかないですし、その想像を元に捜索をするというわけにもいきません。あくまで確実に知りえた情報だけで捜索することになります」  先野はシステム手帳に書き込んだものに今一度目を落とす。電話で聞いた、窓から見えたというものは――。  高圧線の送電塔  鉄道の高架  二本の煙突  高速道路  ゴルフの練習場  家電量販店の看板    これらが窓から見えたと言う。いずれもこの世に一つというものではなく、どこにでもあるものばかりだ。とりあえず近場からさがしていくことになるだろうが、最後には現地を回りながら地道にあたっていくしか手はなさそうだった。  しかし……とシステム手帳から目を上げて先野、 「見つからないこともあるというのは留意してください。この情報が正しいとは限らないですし……」 「はい……」  理性では納得できるものの心では悔しい思いが阿杉の表情に現れていた。窓から撮った写真があれば確実だろうが、言葉だけではどれだけ正しいかわからない。間違っているかもしれないわけで、甚だしく頼りないといわざるを得ない。たったひとつの情報が誤っていたというだけでもう見つからないだろう。 「むろん、それでも最善はつくします」 「はい、お願いします……」  暗い顔で返事をする阿杉に、だいじょうぶですよなどと慰めるつもりはさらさらない先野だった。この案件はそう簡単ではない。だからこそ探偵を頼ってきたのだともいえるが。
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