二人のサブ

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 次に入ったのはゴルフ練習場である。そこでも同様に聞き込みをした。行方不明になった人間がゴルフ練習場に行っているというシチュエーションはなさそうな気がしたが、連れの男性がいたとしたら、それについて行っているという可能性もなくはない。  緑色の巨大なネットを見上げ、原田は建屋へと入っていく。ゴルフの趣味はないから当然ながら利用したことはない。過去、探偵の調査で何度か訪れている程度だ。  入口から入ると、ゴルフ用品の売られている店舗兼受付。受付のフロントの隣には練習場へつながる開口部。パチンパチンと、球を打つ音が聞こえてくる。平日のこんな時間からゴルフの練習をしている……ゴルフをする人種は違うのかもしれない。  原田はフロントにいる男性店員にまっすぐに向かいながら、スマホを器用に操作。 「あの、すみません。この人、見かけませんでした?」  原田を客だと思っていた中年の男性店員は、やや鼻白んだ様子で原田が突き出すスマホの画面を見た。老眼で焦点が合わないのか、ちょっと目を引いて、それでもよく見えず老眼鏡をかけた。 「見かけませんねぇ……」  男性店員は首をひねる。 「男性と二人連れってのも、なかったですか?」 「うーん、記憶にないなぁ……兄さんのカノジョかい?」 「いえ、ぼくは探偵で、依頼者の代わりにさがしているんです」 「浮気でもされた? 逃げた女を追いかけても、もう戻ってこないんじゃないかな」  さがしている理由までは語っていない。店員が勝手に解釈したようだ。だが実際、興信所が扱う案件のうち浮気調査はかなりの割合にのぼる。 「たいへんだねぇ、探偵さんも。見つかったとしても、そのあと修羅場になるし。そういや、殺人事件とかに関わることってあるの?」  探偵とみるや、ミステリー小説の主人公という連想はおそらく永久に続くだろう。原田自身も新・土井エージェントに就職する前は、少なからずそんなイメージを抱いていた。しかし現実はそんな案件は皆無に等しい。警察事になってしまう案件はあるにはあるが、それは恨みを買うことがあったり、依頼者がトラブルに巻き込まれていたりということで、冷静に考えてみればさもありなんであった。 「ぼくは新人なので。そういうのは先輩探偵の出番なんです」  でもちょっと悪戯心が出てしまった。たまにこういう二時間ドラマを見てそうな人をからかうのもおもしろいので、ときどき思わせぶりなことを口走ってしまう。 「ああ、そうなんですねぇ。新聞とかにはそういうの載らないんだろうけど、やっぱりあるんだねぇ」 「はい……」  心の中で舌を出して、 「その人、もし見かけましたら、ここへ知らせてもらえるとありがたいです」  名刺を手渡した。 「うん、わかったよ。その代わり、どんな事件か聞かせてくれないかい?」 「そうですね……見つけるのに協力いただけたら、ここだけの話ということで。では」  そんなことがあるわけないだろ、と思いつつ、失礼します、と言って原田はゴルフ練習所を出た。
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