突然の電話は

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突然の電話は

 スマホが鳴った。  阿杉(あすぎ)統和(とうわ)はベッドサイドに手を伸ばし、軽やかな呼び出し音を続けるスマホを取り上げる。  明るくなった画面に表示されている名前は「彩葉」。その表示を見て飛び起きた。通話アイコンをタップ。 「……もしもし……彩葉(いろは)なのか……?」  しわがれた声が出た。ワンルームの窓の外はほんのりと明るい。もうすぐ日の出という時間帯だ。こんな早朝に電話をかけてくるなど普通ではない。いや、そんなことよりも―― 『よかった……! やっとつながった。ねぇ、統和、救けにきてほしいの』  懐かしい声だった。ずっと聞きたかった、けれども一年も聞けなかった声。 「本当に彩葉なんだな! 心配したよ、ずっと連絡がつかなかったから。いったいどうして……いま、どこにいるんだ? っていうか、救けてって?」  叩き起こされて、けれども不機嫌な態度ではなく、声音に驚きと戸惑いと安堵が入り混じった。訊きたいことがいっぺんに押し寄せて整理がつかない。 『わからない……。でもどこかの部屋のなかで──』 「窓の外にはなにか見えないか?」 『ちょっと待って──』  電話の向こうで移動していく気配。 『煙突が見える。あと……あれは送電線の鉄塔かな……』  阿杉はそれを急いでベッドサイドのメモ帳に走り書きしていく。 「他には?」 『ええっと……』  だが、見えるものをいくつか言ったその途中だった。唐突に通話が切れた。あわてて折り返して電話するもつながらなかった。バッテリーが切れてしまったのかもしれなかった。それでも電話をかけてくれたことが救いであった。
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