005到着

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005到着

 フィールをお嫁さんにしたいなぁじゃないよ、俺って馬鹿だ。まだ仲が良くない男からおかずにされたらフィールは当然ながら嫌に決まっていた、俺ってばそんな繊細のことを何にも考えずに動いていた。思わずフィールにあわせる顔が無いと、浴室でのぼせそうになった。そんなわけで俺はフィールに対してどうにも申し訳なく、お風呂から出たらフィールの方を見れずにいた。だがそんな俺に何も知らないフィールは話しかけてきた。 「テスティス国に着いたら、リードは何をしますの?」 「えっ、ええっと猟師かな。今までも狩りをしたことがあるし、フィールはどうするんだ?」 「街で一生懸命に働いている娘さんたち、彼女達のようになりたいですわ」 「フィールが給仕をしてくれるのか、そりゃその店が流行りそうだ」 「でも私、紅茶を入れたこともありませんの。彼女たちのように働けるでしょうか?」 「そこは頑張るしかないな、あっ!! お店が決まったら絶対に行くから教えて」  などと俺は和やかにフィールと話しながら、それでも先ほどの行動がフィールに悪くて仕方ないと思っていた。そうやって目を白黒させている俺を、フィールは小首を傾げながら不思議そうに見ていた。俺はとりあえず今日の気持ちだけは伝えておこうとフィールにこう言った。 「フィール、俺たち仲良くなれたら、結婚しない?」 「それはもう、一回お断りしました」  俺はフィールからのきっぱりとした拒絶の態度に、内心ではぐさりっと胸に何かが刺さった気がした。でも、それでも俺は諦めずに言いつのった。 「だって俺、フィールが好きなんだから簡単に諦められないよ。それに最初はまだ出会ったばっかりだったから、これからお互いを知っていけば可能性はあるはずだ」 「…………それは確かに全く可能性が無いとは言えませんが、今の私にはそんな気はありません」 「少しでも可能性があるならいいや、旅の間やテスティス国に落ち着いてから、またフィールに会うために努力するよ」 「それはリードの自由です、私は何も申し上げることはありません。でも、私って可愛いですか?」 「すっごく可愛い!! 俺より小さくって!! でもしっかりとした意志があって!! お風呂上りとかもすっごく色っぽくて可愛い……、あっ!?」 「いっぱい可愛いをありがとうございます、でもこれからはお風呂上りは部屋の隅にでもいますね」  気のせいだろうか俺からフィールは確実に距離をとった、確かに同じ年齢の男から性的な目で見られるのはキツイだろう、この場合は彼氏とかだったりしたら別だ。そんなこんな色んなことがあって、俺とフィールの距離は縮まったのか、広がったのか分からなかった。俺はどうすればフィールと結婚できるだろうと思いながら眠りに落ちた、フィールはまだ起きていたが何を考えているのか知るのが怖かった。そうして複雑なことがあった翌日、俺たちは雨音で目を覚ました。 「雨か、まいったな。予定を一日遅らせなきゃならない」 「天の気ですもの、仕方ありません」 「それじゃ、朝飯を食べたら一緒にゲームでもしよう」 「げぇむですか、よく分かりませんがお相手します」  そうして俺たちは朝飯を食べたら〇×ゲームや、しりとり、イエスノークイズなどをして遊んだ。結構フィールは顔にでるタイプで、俺は彼女の顔を見ながらゲームを優位に進めていった。フィールも途中でそれに気がついたのか、決して顔を上げずにゲームすることもあった。一日目はこれで良かった、だが雨は翌日も降り続いた。俺は路銀をあまり持っていない、この前の金貨一枚という臨時収入があったから、だからこんな高級宿に泊まれているのだ。だからフィールに俺は言った。 「フィール、正直なところ雨はまだ続く気がする。俺はもっと値段が安い、風呂が共有の宿屋に行くことにする」 「それなら私も行きます、女の一人旅と見られては怖いですわ」 「ごめんな、俺が金を持ってないばかりに」 「あらっ、そんなこと気にする必要はないですよ!!」  雨の中俺たちは風呂が共有の宿屋の二人部屋に移動した、この方が格段に宿屋の料金は少なくて済んだ。雨は今日も降り止まない、俺はフィールとゲームしたり、平民のことを勉強したりしながら過ごした。結局、雨は七日間降り止まなかった。俺たちは八日目にやっと旅立てることになった、荷物をまとめてまた命綱をつけて、そして人目のない森の中で俺たちは空へと舞い上がった。 「やっと晴れてよかったです」 「本当だよ、路銀が心配だった」 「どのくらい飛んだら、テスティス国に着きますの?」 「あと二日くらいだと思う」 「あと二日でお別れですのね」 「でも俺はフィールに会いに毎日行くからね!!」 「ふふっ、本当に毎日来てくださいますか?」 「当たり前だ!!」  そうして俺たちは順調に二日空を飛んで、とうとう目的のテスティス国に着いた。その端っこにある街、テロスの街にやっと到着した。いつもどおり三倍の通行料で街の中に入って、俺たちはまず身分証を作ることにした。 「身分証が無いと何もできませんから」 「でもどこで作ろうか、商人ギルドや傭兵ギルドそれに冒険者ギルドが身分証を作るのは簡単だ」 「私は冒険者ギルドに行きますわ!!」 「えっ、何か冒険したことあるの?」 「無いですけど、商人や傭兵は私には無理な気がしますの」 「商人ギルドの方が多分だけど、身分証を作るのは簡単だよ」  そうやって俺たちは着いた日は宿屋に泊まって、これからのことをよく話しあった。俺としてはフィールが飯屋の手伝いをするんなら、商人ギルドのほうが身分証が作りやすいと思った。でもフィールは冒険者ギルドを頑なに望んだ、彼女がそんなに望むのなら俺は挑戦してみるかという気になった。 「分かった、冒険者ギルドで身分証を作ろう」 「ありがとうございます!!」 「もし駄目だった時は商人ギルドに行くよ」 「駄目にならないように頑張ります!!」  そんな経緯があって俺たちは冒険者ギルドに来ていた、昼間に行ったのは人が少ないだろうからだ。ゲームの定番では朝仕事を受けて、夜に報告するからという簡単なゲーム知識だった。実際に昼間だからか人も少なかった、俺たちは受付のお姉さんに声をかけて冒険者への登録を頼んだ。 「はい、冒険者への新規登録ですね。簡単な運動試験を受けてもらいますが、大丈夫ですか?」 「俺は大丈夫だ」 「私だって大丈夫です」  そうして受けた試験は持久力試験と対人戦闘試験、それから魔法試験の小さな的当てゲームだった。俺は正直フィールは大丈夫だろうかと、そう心配しながらそれぞれ試験を受けた。 「持久力試験よ」  持久力をみる走る試験は簡単だった。本当にただ走るだけで俺は一緒に受けた十人くらいの二人目で通った、ちなみにフィールは頑張っていたがビリだった。 「対人戦闘試験、魔法は禁止よ」  対人戦闘試験は銀の髪に蒼い瞳のおっさんが相手で、俺はもうちょっとで勝てなかった。魔法もありなら勝機があったが、魔法無しではまだ剣ではこのおっさんには敵わなかった、ちょっと悔しかったのでおっさんの名前を聞いた、シュティックというらしく覚えておくことにした。フィールは戦うことができず不戦敗だった、あんまりがっかりしているので頭をよしよしと撫でておいた。 「それじゃ、最後は魔法試験よ」
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