49人が本棚に入れています
本棚に追加
第二章./仮面(イツワリ)の摩天楼
────…ヨーロッパの城のような会場が、神の手による彫像のような"男"の空気感と、
もうひとり。
猛烈に美しく且つ、野生美をおもわせる"男"の動向によって、
忽ち剣呑な趣へと変わっていった。
シンッーーー、と。
静まり返った来訪客は、
雲霞のごとく
そぞろに気を引き締めていく様子で。
────"彼ら"は謂わば、国家賓客である。
贔屓されているご令嬢の誕生祭とは言えども、やはり。
富者たちや大使館、芸能関係にあたる富豪主たちなど。
上流階級に属する来賓客は、
皆一様に、
"彼ら"の機嫌を損なわぬよう、留意するのが鉄則。
それは、
パーティー列席者のなかでの
暗黙のルールであった。
────…しかしどうやら。
今回の事態は、只ごとでは無いらしい。
ハイグレードなパーティー仕様の正装を身にまとい、すぅっとなだらかな所作で半身を屈め、とある少女の落ちた目線に合わせようと顔を傾げたシルバーブルーの髪の男、
ウォン・アーウェイ。
彼が初めて────…、
大衆に見せたその姿を。
"彼自身"から、会場内の女性に声を掛けるなどこれまでに
一度たりとて無かったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!