第二章./仮面(イツワリ)の摩天楼

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 ____…時間にしてわずか、約数分間の、一方通行な対話。  ピリピリ、と。徐々に緊迫と冷気で張りつめていく会場の空気に、素封家(そほうか)や成金は無論。  大資本家や大企業の権力者、  またアラブ連盟関係者各位から、貴族や華族出のご令嬢・ご子息たちまで。  皆、面差しがしだいに強張っていくのを、止められはしなかった。  凍りつくような重圧感。  じわりじわりと押しつけられ、息苦しくなってゆくほどの…、  そんな、だれもが畏怖し、固唾(かたず)を飲むしか敵わない状況に突如、緩和剤のごとく  終止符が打たれたのは────…、  どこか落ち着きはらった女性の声が。  淡く、会場内に浸透し響き渡ってからだった────。  「…何をしているの、」  柔らかく、しかし女性の声にしては低めの、  「────、ッ。緋雪(ひゆき)、様」  ゴクリ────ッ。誰とも知れない、(おびただ)しい人々の固く、喉を鳴らした息遣いが途端に、撹拌(かくはん)した。  静かに現れたその女性を、茉美子(まみこ)は『様』と名打った。  それだけでどれほどの地位に値する人柄なのかを裏付ける。  茉美子は、その円みがかった目許を綻ばせると、茶色とグリーンの混色アイを喜色に変え  『緋雪』と名指す女性の傍へと、足を赴かせたのである。  「ッわ、わざわざ来てくださったんですか?今日は伺えないって、」  「えぇ、そのつもりだったんだけれど。去年も茉美ちゃんの  誕生会には出席できなかったから、」  「そっそんなこと!お気になさらなくっても。…龍牙(りゅうが)、様や皆様が、  緋雪様を公に晒すのは  あまり  好まれていないのは承知していますから」
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