第二章./仮面(イツワリ)の摩天楼

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 ────…突如あらわれた、濡羽(ぬれば)色の髪の女性。  年齢からして凡そ、30代半ば。  ・・・・・といったところだろうか。  その彼女と、嬉々として談笑する茉美子(まみこ)とは裏腹に、参列者たちは  彼女を視界に投じた瞬間、────…一様に鎮まりかえる。  ヒソヒソ話さえ開口することも  しなくなった  彼らは皆、  そろえて口を閉ざしていく始末であるのだ。  それはまるで────…、『蛇に睨まれた蛙』ととても、よく、酷似していた。  同時に、その女性の登場で気が削がれたらしいアーウェイとカーフェイも。  一旦、呆れたように  殺気を仕舞っていくと切りをつかすべく  カーフェイは顎で、  側近の彼に指示を下した。  掬ったままだった少女の手を、やんわり、離したアーウェイは  カーフェイからの指南に肩を竦ませ。  しかし躑躅(つつじ)色の髪をした少女を見下ろし、ごく、  自然な所作で頬に張りついた一房を  ふたたび耳に、かけてやると。  その鋭い眼光は、傍らにいた船岡ホールディングスの令嬢へと厳しく  向けられた。  「────…申し訳ありませんが、こちらの女性を少々、お借りしても?」  「────ッえ?、」  ────…刹那、  少女の(かんばせ)が。  おおきく動揺  したように、強張った────…。
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