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────…突如あらわれた、濡羽色の髪の女性。
年齢からして凡そ、30代半ば。
・・・・・といったところだろうか。
その彼女と、嬉々として談笑する茉美子とは裏腹に、参列者たちは
彼女を視界に投じた瞬間、────…一様に鎮まりかえる。
ヒソヒソ話さえ開口することも
しなくなった
彼らは皆、
そろえて口を閉ざしていく始末であるのだ。
それはまるで────…、『蛇に睨まれた蛙』ととても、よく、酷似していた。
同時に、その女性の登場で気が削がれたらしいアーウェイとカーフェイも。
一旦、呆れたように
殺気を仕舞っていくと切りをつかすべく
カーフェイは顎で、
側近の彼に指示を下した。
掬ったままだった少女の手を、やんわり、離したアーウェイは
カーフェイからの指南に肩を竦ませ。
しかし躑躅色の髪をした少女を見下ろし、ごく、
自然な所作で頬に張りついた一房を
ふたたび耳に、かけてやると。
その鋭い眼光は、傍らにいた船岡ホールディングスの令嬢へと厳しく
向けられた。
「────…申し訳ありませんが、こちらの女性を少々、お借りしても?」
「────ッえ?、」
────…刹那、
少女の顔が。
おおきく動揺
したように、強張った────…。
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