飛来せしモノ

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飛来せしモノ

 その隕石は突如としてこの星に落ちてきた。大きさは直径50㎝程だ。  隕石が飛来してから星の大地は大きく変わった。形が変わったわけではない。性質が変わったのだ。  大地から生まれる海や自然の植物たちが大きく変化した。自力で歩行を始めたり、色の変化を起こした。やがて微生物にも変化が訪れ、それを食す小さな生物、それをさらに捕食するモノ、食物連鎖のピラミッドを駆け上がっていくようにその異変は広がっていった。  大きなサメを食べる蟹が現れた、タテガミが煌々と燃えるライオンが現れた、ガゼルを捕食する花が咲いた。  やがてその異変は人類に手を伸ばした。畜産業の家畜たちが異変後の植物を食べ、そしてその動物たちが食肉加工され、それを人間が食べる。農作物もまたしかりである。最初に異変が現れたのはアメリカの小さな田舎町に住む一人の女性だったと言われている。  その女性はある日突然、右耳が聞こえなくなった。しかし、左耳の聴力が格段に上がった。1km先の噂話が聞こえ、周波数の可聴領域が広がった。  異変を訴える者は徐々に増えた。チーターを超えるスピードで荒野を駆ける男がいた、海で生活を始める女がいた。能力者と言われる者達は各地で出現し、人類には行き過ぎた力に恐怖を覚える者もいれば歓喜する者もいた。 「これはあの隕石の仕業に違いない!」  誰かがいったこの言葉で、飛来した隕石の研究が始まったが、何年もの研究の末、分かったことといえば「隕石が飛来した影響でこの大地に異変が起きたのは間違いない」という何とも頼りない事実だった。そんなことは分かっていると皆が思ったし、発表者もそれはとっくに承知していることだった。全ての植物、動物、人類が変化をしたわけではないが、異変の種となるものは確実にこの星に存在する全てに潜んでいる。  やがて世界は異変に慣れた。異能の力と上手に付き合い、今日も世界は回っていく。  しかし、この星に起きた出来事を詳しく知る者はまだ現れない。
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