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『間男料五両』
色男、ある亭主もちの女性との浮気がばれる。
相手の女性といっしょに切り殺されても文句は言えない。そこを何とか拝み倒して、五両で手を打ってもらえることとなる。
相手の剣幕に押されたもので、男にとって五両は大金であったが、その場から一時も早く逃れたいという気持ちから応じる。
しなだれてうちに帰ると、その様子を見た妻が問う。
「あなた、どうしたの」
事が事だけに、女房には内緒にしておきたいところだが、五両という大金の工面もつかない男は、相手に押し掛けられては事が大きくなるという心配もあり、女房に事情を打ち明けることに。
「あらら、それは大変なこと」
驚いた妻は夫にいろいろと問いただす。男は「金輪際浮気はしない」と妻に約束する。
「そうですか、あの荒木屋の奥さんですね」
「おう、そうだ。でもな、運悪くたった一度のところを押さえられたんだ」
『あの人とは』と、あやうく他にもあったことを疑われるような言葉を吐きかけたが、そこはうまく飲み込む。
「荒木屋ですか」
女房は、それを聞いてしばらく考え込む様子を見せる。
やがて「それで、五両でしたね」と女房は夫に確認する。
「おう、五両だ」
それを聞いた女房、
「そうですか。あんた心配することないです」と答える。
「え、五両もの金、都合がつくのかい」
「そうね。今から荒木屋に行って、十両ばかりもらっておいで」
そう言われた夫は怪訝な顔をして、「どうして十両もの金がもらえるんだい」と女房に問う。
すると女房、平然と答える。
「だって、あの人とは三度だから、差し引きでもらえるのさ」
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