バトルマン・スーパージャンボ、それは

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賢治は、工場から持ち帰った古めかしい機器をそこに入っていたマニュアルで動かすことができた。 それは何世紀か前に流行ったというゲームマシンであったが、映像装置も兼ねていたようだ。 賢治は、タブレットに似た端末にいくつかの物語を映し出すことに成功した。 高地のドンファンとか、いつの時代ともわからない間男の話に、今までに経験したこともないような性的な興奮を覚えた。 そして最後に見た拳銃で妻を撃ち殺す話には、驚きを通り越して、卒倒するくらいであった。 賢治は、このような映像を初めてみた。 この世界では、娯楽というのは自宅でヘッドフォンをかぶって、テレビの様な装置から送られてくる仮想の映像と直接脳波に作用する刺激で得るようになっていた。もしろんそれらは政府が許可したものに限られる。 本とかテレビ、映画などというのは、過去の遺産として政府が管理する博物館にはあったが、一般人は実物を見たこともないし、それがどのようなものであるかを理解することはできない。 賢治がこれを自宅に持ち帰れたのは、偶然としか言えなかった。 工場の出入りには余計な荷物、許可されたもの以外の持ち込み、持ち出しは厳重にチェックされていた。だがあの日に起こったコンベアの故障修理で、入ってきた機械のメンテナンス車にそれをうまく忍び込ませ、持ち出すことに成功した。 賢治は持ち帰った機器で毎夜、むさぼるように例の映像を見た。 そこにはなにやら夫婦生活とか、愛人との行為が生々しく映し出され、それは賢治がカプセルホテルから得ていた興奮とは異質なものであった。
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