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「ね、賢治さん。先輩は火の星に行ったことありますか」
賢治は、後輩の大悟に聞かれる。
「そうだな。君はまだ火の星に行ってないのか」
「ええ、昨年ようやく月には行けましたが」
「そうか。そりゃ良かったな。どうだった月は」
「ええ、なんだか寂しいところでしたが、そこから見えた私たちの星が、とても真っ青できれいでした」
「そうか。私は火の星はおろか、木の星にも行ってるぞ。もう大分前のことだがな」
「そうですか、すごい。ぼくも行きたいな」
「大悟、君もすぐに行けるようになるさ。ここの仕事は3年で月、そして5年も続ければ、火の星までの観光体験チケットがもらえ、その後は4年で木の星だ。頑張れ。君は、ここの仕事4年だったかな」
「ええ。もう少しですね。頑張ります。しかし先輩、今の世の中は、何でも機械がやってくれるから楽ですね」
賢治の言葉に頷いた大悟は、そんな言葉を口にする。
「そうだな。通勤は一人乗りコンベアでここにやってこられるし、どこかに行くことなど必要もないしな。飛行艇なんてものは国が持っているものしかないからな」
いつのころからか、自由旅行体験システムによって、人は自宅でいつでも好きなところへ行けるような仕組みができており、観光という行為はいつの間にかなくなっていた。ただ、この星以外には、政府から支給されるチケットがなければ行けない。
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