モノクロームと花火、ゆるやかな懸想

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「最近、なんか……あいつの顔とか、声とか、……オレにしてきたこととかが、延々、頭のなかで、ぐるぐるしてて。それ以外のこと、なんも考えられなくなってきてて、……それが、めっちゃくちゃ、……怖い」  潔良の声が、尻すぼみにちいさくなっていく。  のろのろと俯き、呟く。 「お前、どう思う」 「は?」  困惑したように、雛見市が言った。 「――何が?」 「わかんだろお前。……経験豊富じゃんか」  雛見市は応える。 「それが、答えじゃないですか。その、質問自体が?」  何でおれに訊くんすか。  そんなこと。  まだるっこしそうに、頭をぐしゃぐしゃっ、と掻き回す。 「おれだって、――」  どおおぉぉん!  雛見市がなにかを言いかけたその時、物凄い音が大気を揺らした。え、という声が、どちらからともなく洩れる。  花火はつい数分前に、上がらなくなったばかりだった。  空を見る。  ――そこには何も、見当たらない。  光の跡も、星も。  ただ、暗闇だけが、そこに黒々と、とぐろを巻いている。 「……ひぃちゃん。いま、思い出したんすけど」  汗ばんで幾分か明るさの減った髪を揺らし、後輩がふと、言葉を発する。  潔良は何もない空を一心に見つめながら、無言のままでうなずく。  その目には再びあの、胡乱な色が戻ってきている。  雛見市はぎゅっ、と眉根を寄せて、ひぃちゃん、と再度、彼の注意を引こうとするように、名を呼ぶ。 「色々と花火について調べてた時に見たのを、いま、ふと思い出したんすけど、……さっき上がってた時差式の花火、あるじゃないすか」
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