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「なんともセンパイらしい理由っすね。なんか、ちょっとホッとしたっす」
安心してください、もしそうなったら、おれがそいつをブッ飛ばしますから――わりと物騒なこ とを、飄々と宣う。
きらきらと輝きながらこちらを見つめる、無邪気な瞳。
――眩しい。
逃げ場を探した目線が、しぜんに下へと落ちる。
「……お前も、けっこうラフな格好だな」
夜闇によく映える、スカッとした蛍光グリーン地のワンポイントトップスに、汚れひとつ見当たらない白いハーフパンツ。
すらりと伸びたカモシカのような両脚が、惜しげもなく外気にさらされている。
「ひぃちゃんが迷子になってもすぐ見つけられるように、コーディネート考えてきたんっすよ」
「余計なお世話だ」
「うへへ、かわいー」
ポンパドールに結った前髪をちょいちょいと引っ張ってくる手を払いのけ、潔良は後輩に尋ねた。
「で、花火はどこで見られるんだ?」
「空に打ちあがるんで、まぁどこでも見れるんすけど……せっかくだから、ごみごみしてないトコがいいっすよね」
まかせてください。絶好の穴場スポット知ってますんで――胸を力強く叩いてみせた後輩のあとに続いて、潔良はぎこちなく歩き出した。
◇
「そういえば。なんか、食べたいものとかあります?」
お祭りなんで、うまいもんいっぱい売ってますよ!
道の所々に散らばった屋台群を指差し、後輩が訊いた。
「あー……いや、オレはいいよ。値段を見ただけで眩暈がしてくるから……」
「先輩って……どケチなんすね」
「せめて倹約家と言ってくれ……まあ倹約というより、えーと……余裕がないだけかな。金銭的な」
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