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後輩がふしぎそうな顔をする。
「センパイ、バイトとかはしてないんすか?」
「してはいるんだけど……、家にお金を入れたり、家賃払ったりなんたりしてると、大体いつも素寒貧になってるんだよな」
「ふーん」
後輩は空を見上げて言った。
「てか花火見ないと。話してる間にも、どんどん上がってるんですから」
潔良は確認する。
「もう着いたのか?」
「はい」
後輩が足を止める。
どうやら、祭りがおこなわれている会場の、裏山の中腹あたりらしかった。
鬱蒼と茂る森の中にまで踏み込もうと考える輩はいなかったようで、彼ら二人以外に、人の姿は見当たらなかった。
「せっかくここまで来たんすから、しっかり見ないと勿体ないっす」
「……」
話を振ったのはそっちだろ、というツッコミは胸の内にとどめて、潔良はそれにならった。
ちょうど、かなり大きなものが打ち上がったタイミングだった。
細かい粒になった光が広がったあとに、外側にも放射状の線が現れる二段構え。
ちょうど、彼岸花のような形だった。
「時間差で光ったな。どうなってるんだろ」
「ネオンサインと同じ原理っすよ。燃焼の時間とか温度をちょっとずつ変えて、動いてるように見せてるんす。仮現運動の応用っすね」
潔良は目を丸くする。
「よく知ってるな」
雛見市は照れくさそうにはにかんだ。
「へへ。センパイと一緒に花火大会ってことで、来る前にちょっとばかし、調べたんす」
カッコつけたいじゃないすか。
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