モノクロームと花火、ゆるやかな懸想

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 鼻の頭をかきながら、おどけたように言う。  さっきから引っかかっていたことを、潔良は質問してみることにした。 「なぁ、さっきから気になってたんだけさ。……口調が、いつもと違う気がするんだけど」 「あ。バレちゃいましたか。――気づいてないかと思ってたのに」  後輩は口を大きく開け、あははは、とおかしそうに笑う。  下を向き、呟くように言った。 「なんかですね。……距離近いというか、その……。これまでのおれって、なんか……後輩のクセに、ひぃちゃんに対して、なれなれしすぎたかなって」  だから、いっかい、敬語で話すようにしてみて、反応を見てみたかったんす。  もし、そのほうが良いのなら、これから変えていこうと思って――。  声をだんだん低めていき、彼は顔を上げた。  潔良の顔を、まっすぐ見つめる。  どこかさみしそうな瞳が、花火の光を反射して、複雑な色に輝く。 「……ひぃちゃんって、最近、あの黒髪のひととばっかり、仲良さそうにしてるから」 「……!」  潔良の視線が、うろうろと泳いだ。  口を開きかけ、また閉じる。何回か、その動きが繰り返された。  空で輝く、大輪の花。  その残骸がぱらぱらと宙を舞い、消える。  潔良はそれを、綺麗だ、と思った。  後輩の目を、見る。  同じように、彼の瞳も彩られている。  息を吸って吐く。呼気がわずかに震えたので悟られないように、唇を軽く結ぶ。汗ばむ額を乱暴に手の甲で拭うと、結わえた前髪がそれに引きずられへばりつく感覚。いやに不快さを増して、伴った。  べたつく手をシャツの裾に、何回か擦る。体側に放った腕はほんの少しだけ、不自然な軌道を描いた。  後輩の眼を再度、見る。
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