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「そんなに落ち込まなくて大丈夫だよ。言ったでしょ、聞き届けたって。ちゃんとバイト先のお店潰したから安心してよ!」
目の前の天使は無邪気な声で満面の笑みを浮かべながらさらっと言った。
とんでもないことを聞いた気がする。
「ごめん、もう一回言ってもらっていい?」
「そんなに落ち込まなくて大丈夫だよ。言ったでしょ、聞き届けたって。ちゃんとバイト先のお店潰したから安心してよ!」
一言一句違わず同じことを言ってくれた。
全部言ってくれてありがとう。いやでも問題はそんなことではなくて。
「ちゃんと……お店……つぶし、た?」
「そう。潰した。だってきみがそう願ったでしょ?」
「……ヴェル、さん?」
「呼び捨てでいいよ」
「そんなことより、店を潰したって?」
「そうだってば。お店に確認してみなよ。それとも、そんなことしなくたって連絡は来るのかな?」
天使ってもっと優しく穏やかな生き物なんじゃないのか?
こんなにも悪意なく誰かの願いのために誰かを不幸にできるのか。背筋を冷たい汗が伝う。
「不幸? きみを不幸にしていた相手でしょう?」
心を読んだかのように的確な台詞を口にしたヴェルは、どこまでも汚れのない笑みだった。
得体のしれない恐怖に心音が早くなる。
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