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きみの味方
大学の帰り道、通りがかった公園で天使を見た。
比喩ではなくて、本当に天使だった。
頭には白金の輪っか、背中には白い羽。中学生くらいの少年とも少女ともとれる中世的な見た目の天使は確かに顔も整っていた。
俺は幻覚を見るくらいに疲れているのだろうか。いや、そうなんだろう。
さすがに大学に行きながらバイト27連勤なんておかしいと思う。今時そんなブラックバイトがあるか? もうすぐ1カ月だぞ。
「はぁ、やだやだ」
俺は公園のベンチで黄昏ている天使から視線を外した。
今日はさっさと帰ってさっさと寝よう。それがいいそうしよう。
「ねぇ待って。ぼくのこと見えてるよね。ねぇ見えてるよね?」
いつの間に移動したのか、目の前に天使のドアップが広がっていた。
思わずさっきまで天使がいたはずのベンチを振り返ってしまった。けれどそこに天使の姿はなく、やはり目の前にいる天使がさっきまであそに座っていた天使のようだ。
「うん、やっぱりぼくのこと見えてるね!」
無邪気に笑う天使は、中学生くらいの見た目のわりに俺の目線より少し高いところに顔があった。
俺は天使から距離を取って後ろに下がれば、この天使が地面から数十センチ浮いていることが分かった。
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