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「ねぇ、赤ちゃんが出来たみたいなの」
「えっ」
目の前で驚いた顔をしたのは、間違いなく若い頃のパパだ。
「子供って……誰の子?」
「誰って、何言ってるのよ。祐くんの子供に決まってるじゃない」
「ふざけるなよ。俺はちゃんといつも避妊してるだろ。オマエ誰とヤッて出来た子を、俺の子供だって押しつけようとしてんだよ」
「ち、違うよ! バカなこと言わないでよ!」
「オマエみたいな浮気女とは、今日を持ってお終いだ」
パパが醒めた目で見つめてくる。こんな顔、美音は生まれて初めて見た。
「嫌だよ、何言ってるのよ。勝手に誤解しないでよ」
「いやいや、誤解とかどうでもいいんだよ」
「よくないよ。言いわけないでしょ」
「いや、あのさぁ、悪いけどちょうど潮時だと思ってたんだよね」
「えっ……どういうこと?」
「実は俺、うちの会社の社長の娘に気に入られててさぁ、社長が娘と結婚しろって」
パパがニヤリと微笑み、美音は心の中で「最低……」とつぶやく。
「嘘でしょ? だって……」
「ごめん。マジで」
「何言ってんの。冗談じゃないよ。アタシをなんだと思ってるのよ!」
「だって、社長の一人娘だぜ。結婚すれば将来は俺が社長になる……。でもさぁ、オマエと結婚してもあんまりメリットないじゃん」
大好きなパパが、こんなに酷いクズ男だったなんて……。美音は激しい怒りが湧いた。
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