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(ひいらぎ)、本当にアレでいいのかい?」 お父様と呼ばれた男性は酷く優しい声色でその少年に微笑みかけると、少年は大きく頷いた。 「うん。あの子が欲しい。とびっきり可愛いもの」 おもちゃが手に入る直前の期待に満ちた笑顔を浮かべる少年こそ、とびっきり美しい顔立ちで、色素の薄さも相まって精巧な人形にもAIで描かれた綺麗な絵にも見える。 彼の父は満足そうに目元を緩めて「柊は本当に可愛いな」と親バカ発言を聴衆の前で晒し、くるりと私に向き直り少年と同じように私を指差した。 「君、家名は?」 その目は同じ人なのか疑わしい程冷たく、声は寒気が襲うほど冷酷で、一瞬にして会場全体が息を呑む。 だが、挨拶もなく尊重もない態度は、礼儀を知らない私からしても無礼極まりなく、湧き上がる不愉快さで薄れた恐怖がこんな発言をさせた。 「…私、物じゃありません」 分かりきった事を敢えて言ったのは、彼らのやり取りに感じた違和感と、もしかして、万が一にも人間と認識されていないのでは、と思うくらい『物扱い』同然な態度が気に食わなかったから。メインは大人だとしても、私だって歴とした招待客の1人である。 そして、失礼な振る舞いが許せない程度には箱入りに育てられた私は、余りに本家の事にも疎く、幼く、愚かだった。
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