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「モモに褒められるなんて嬉しいな」
表情も体格も、どう見ても男性なのに、やはり『美しい』という言葉がピッタリだ。
「こんな顔に産んでくれた両親に感謝だね」
でも、と柊様が鼻先がぶつかる程近くに顔を寄せると、煌めく彼の瞳の奥には、ぽけっと間抜けヅラを晒す自分。
「僕からしたら、モモの方が可愛いよ」
そう言って柊様はしっとりと艶のある唇を私のと重ねた。柔らかく優しい瞳に情欲は見えなくて、キスというよりちゅーと表現した方がいいそれは、やはりペットとの戯れに似ている。
いつから口付けをされるようになったのか定かではないが、恐らく中学に入学してすぐの事だった気がする。その時も「モモは可愛いね」と褒められて、同じように間抜けヅラの私に軽く唇を合わせたのが始まり。
額へのキスの延長。深い意味はない。
ただ、一緒に暮らしだしてからその頻度は増えた。
それをどう受け止めればいいのか。真面目に考えていた日々もあったが、やんごとなき人々の考えは、下々には到底及ばないと、諦観に近い結論に至った。
きっと想像もつかない理由な気がする。
「モモ、目瞑ってよ」
小さく笑った柊様がもう一度キスする寸前で、「柊様。いい加減にして下さい」と襖が開き、現れたのは無表情な時生さん。
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