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* 「それにしても本当にいい天気だ」 背筋を伸ばしたまま窓から景色を眺めている柊様が、首を傾けた拍子に目元に前髪がかかった。朝はあんなにフニャフニャでもやはり近衛の後継者なんだと、凛とした姿勢から感じる。 こういう時の柊様はどこか儚く神々しい。 「柊様、失礼致します」 声を掛け、伸ばした手で前髪を横へ流せば、顕になった美しい瞳が私を横目で捉え嬉しそうに細められた。 「ねぇ、モモ」 「はい」 「来週から夏休みだね」 「そうですね」 今更改まってどうしたのだろうと様子を伺えば、顔全体をこちらに向けた柊様が目を三日月のようにして微笑んだ。ゾワリと寒気がしたのは、車内の冷房が効きすぎたせいであって欲しい。 「とびっきりのサプライズがあるから、楽しみに待っててね?」 嫌な予感しかしないのは流石に失礼だろうか。 でも彼がこんな表情をする時は、決まって誰かを困らせる時。そして今回のターゲットはどうやら私のようだ。 「さ、サプライズですか?なんでしょう。気になるなぁ」 せめて心の準備をしておきたい。 「まだ内緒だよ」 「ヒント下さい」 「だーめっ」 モモは絶対驚くだろうなぁ、と笑う瞳の奥が、陰の気配を纏ってゆらり、妖しく揺れた。
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