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失敗したかもしれない。 いや、『かも』じゃなくて『大失敗』だ。 噴き出る冷や汗と、震える唇。助けを求めようと周りに視線を走らせた瞬間、腕を伸ばせば届く距離に近づいた少年がねっとり笑ったかと思うと、一秒後には表情を無くした。 冷ややかな雰囲気は彼の父に瓜二つ。 傲慢とも取れる態度も納得できる。天と地ほどの圧倒的立場の差。私の家系から見て、彼らはまさしく殿上人他ならない。 どうしよう。 潤んだ目頭に力を入れて涙を堪えていれば、「百音(ももね)!」と群勢の隙間から両親の姿。ホッとしたのも束の間、目を見張る彼らは私以上に震えている。 「娘がとんだご無礼を!!」 「柊様!申し訳ございません!!ど、どうかお許し下さい!」 自分より何回りも小さな少年に向かって、人目も気にせず膝を折り、地面に付きそうな程深く頭を下げた。 「一度だけでもご慈悲を、、どうか、どうか」 頭を垂れる両親をまるで気にしない少年は母達に一瞥もくれず、もう一歩足を進めると、とうとう目前にやって来て私を見下ろした。 あどけない雰囲気よりも高い身長が威圧感を放ち、後ずさることも出来ずに彼を見上げる。ごくりと唾を飲み込んでも改善しない強烈な渇きに、無意識に下唇を舐めれば、彼の視線がそこに向いた。 「で、君は?」
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