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「あ、ありがとうございますっ」
「感謝致します!」
露骨に緊張を緩ませた両親は姿勢はそのまま顔だけを上げ、私の事など眼中になく柊様だけを見つめている。あんな扱いを受けてなお、心酔にも等しい表情を見せる2人の気味悪さに鳥肌が立った。
「お父様。やっぱりモモにします」
後ろを振り返り御当主様に笑いかけると「柊の好きにしなさい」と柔らかい声。
「ねぇ、モモ」
身を屈めて私を覗き込む柊様は純真そのもの。私の両手首をきつく握り、悪意のまるでない笑顔を綻ばせた。
「これで今日からモモは僕の『物』だよ」
透けそうな程薄い色合いの双眸はうっとりするくらい美しいのに、恐怖が優ってまともに目も合わせられない。夏とは思えない寒気が背筋を這って、ぶるりと身震いをした。
パーティーとは名ばかり、集めた一族郎党から柊様の『側仕え』を探す場だったと教えられたのは、夜も更けて帰宅した後の事。会場内とは別人なほど上機嫌な両親は、しきりに私を褒め、遅い時間にも関わらず嬉々として各方面へ連絡をいれていた。
恐らく、把握できていないのは本人である私だけ。置いてきぼりを食らったまま、不安から逃れるように頭から布団に潜り込んだ。
一体、これから私はどうなるの。
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