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——不安をよそに、あの夜から7年経った。 今も、私は変わらず柊様の『物』だ。 激変した日々に疲弊する事もあったが、概ね充実している。 父の会社は上り調子で、厳しかった母はあの日からずっと機嫌が良い。歳の離れた弟も私が自慢だとよく言ってくれる。 週末は本家へ通いあらゆる知識や礼儀作法を叩き込まれ、空いた時間は柊様の側に侍った。パーティーでの無礼が原因で本家の人々に虐められないか心配だったが杞憂に終わり、代わりに遠巻きにされて親しい人は出来ないが、思ったより居心地は悪くなかった。 形ばかりの令嬢をしていた時より遥かに忙しい日々は、性に合っているのか苦ではない。むしろ、増える知識に喜びを感じるくらい。 そして柊様は申し分のないほどお優しい主人だ。 無理を言うこともさせる事もない。 年相応に気まぐれではあるけれど、私を傷つける事はないし、何よりあの美しい人間が、私を褒め、慈しみ、可愛がってくれるのは一際特別だった。 側仕えというよりペットに近い扱いも、月日とともに甘んじて受け入れるくらいには、魔性の美しさに緩やかに毒されている。 モモ、と呼ばれる事に最近では違和感さえ感じない。 それでも時折思い出す最初の出会いが、私に囁くのだ。 忘れてはいけない、と。
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