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* 「柊様。朝ですよ。起きて下さい」 朝に弱い主人を起こすのは、ここ最近加わった役目の一つ。 「…遅刻してしまいます…柊様っ、」 控えめに揺さぶるのが悪いのか、声が小さいせいなのか、他の人ではこうはならないのに、私が起こす時はいつも無駄に時間が掛かかる。 「柊様っ!!」 何度目かの掛け声で、ようやく「ん…モモ?」と目を薄く開けた柊様が、おはよう、と口元に笑みを見せてまた目を閉じた。 「目開けて下さい!柊様、困りますっ」 「あと5分…」 「本当に遅刻してしまいます!」 「モモも一緒に寝よう?お布団気持ちいいよ?」 ふにゃりとした笑顔のまま、柊様が布団の端からひょこりと出した手で私の人差し指を摘む。 「ね?早く一緒に寝よう」 「また寝ぼけて…もう起きる時間なんです」 こんなやり取りとここ最近毎朝しているものだから、学校へ辿り着く頃には既にヘトヘトだ。 「柊様!時生(ときお)さん呼びますよ」 時生さんは私達の一つ上で、私と同じく柊様の側仕えだ。とは言え、私とは比べ物にならない由緒正しい家柄で、側仕えというより柊様の右腕、腹心、はたまた懐刀と言った方がいい気がする。 私が飼い犬なら、彼は寵臣と呼べるだろう。 そして唯一、柊様が言う事を聞く人物でもある。
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