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未来のために(3)
頑丈そうなドアが開いた。
何も置かれていない部屋へユーディットは先に入り、彼女は述べた。
「……さあ、入って」と。
「…………」
ムスッとした表情のレナータが入室してきた。
それから、ガッタンっとドアが閉じられた。
レナータ「……へぇーーー。何も、ない……へや……? ここ……勝手に入っても、いいの?」
ユーディット「ここは外部へと振動が伝わらないつくりになっているの。……必要になった際、机やイスは運び入れる」
レナータ「あら、そうなんだ……ご説明ありがとうっ……で、どうするつもり!? どうやって、あたしとの結着をつけようと!?」
ユーディット「安心して。悪いようにはしない。あなたを裏切ったりもしない。共にいることによって、苦しみを生じさせたくはない」
レナータ「ハァ!? なに寝ぼけたこと言ってんだか。あんた、あたしとケンカするつもりで、ここへ連れ込んだんでしょ!? バカ言わないでちょうだい!!」
ユーディット「……」
レナータ「……よーくよく、考えてみたらさぁ……あんたから、戦いましょう〜なんて言ってくるなんてねぇ!? ……あんたって、顔に似合わず……」
ユーディット「黙らっしゃい。これまでのは遊びよ、レナちゃん。これ以上の時空の浪費は許されない段階へと至ったわ」
レナータ「は?? じ、時空?? ……時空じゃないわ!! あたしは、現実の話をしてるのよ!!」
ユーディット「フフフフフ……現実? ……現実ってなにかしらぁ?」
レナータ「現実は現実よ!! あんたがあたしの目の前にいる! それによって、あたしはこんなに不愉快になってる! これこそが、本当に起きていることだっていう紛れもない事実なのよぉっ」
ユーディット「……いいこというわね……フフフフフフ……」
レナータ「笑うなぁ! なにが、どういいってーのッ!?」
ユーディット「……レナちゃんには切実な覚悟がある、と見たわ」
レナータ「覚悟ぉ!? ……そう言うあんたの方こそ、覚悟はできてるんでしょうね!? あんた、これから、あたしにボッコボコにされんのよ!! その整った顔も見納めよぉッ!!」
ユーディット「……そうね。レナちゃん……珍しくも、未来を適確に語っている。……先にわたしの話を聞きなさい」
レナータ「……はなしぃぃ? ……イヤよッ……じれったいわねぇ!! さっさとかかってきなさい!! 正々堂々と、拳と拳でケリつけよーじゃないのォ!!」
ユーディット「短慮性急なところは、本当に人間みたいねぇ。……まずはわたしの話を聞きなさい。それを聞き終えてからでも、いいでしょう?」
レナータ「…………」
ユーディット「……ここは、この部屋は……先ほど言ったように、外へ振動、つまりは音がもれない。だから……あなたがわたしを殴っても、蹴飛ばしても、あなたが叫び声をあげても、誰にも知られることはない。……何者かが、わたしとあなたの間の行為を妨害する、といったことはない」
レナータ「……」
ユーディット「ドアは施錠されてはいない。わたしもあなたもいつでも……このドアから出られる。……わたしがあなたを監禁しているのではない、ということよ」
レナータ「……」
ユーディット「さて……本題に入るわね。レナちゃん……明日、わたしは悪魔たちが集う本拠地へ向かうわ」
レナータ「!!!! な、なんですって!? あ……悪魔の本拠地がわかったの……!!??」
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