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未来のために(4)
ユーディット「厳密にいうと……悪魔たちが集っている魔の城は、すでに判明していた。……これはルトガーさんが見つけ出した」
レナータ「え、え!? ル、ルトガーさんが!? あ、あの、ルトガーさんは……いったいどうなったのッ??」
ユーディット「……地上で悪魔の動きを探っていた彼は……ついに悪魔たちの根城となっている場所を割り出した。が……連絡を待っていたわたしへ情報を伝えてからすぐに……彼は囚われの身となり、人間でいうなら心臓ともいえる天使核を悪魔に引き抜かれ……消滅させられてしまった」
レナータ「!!! ……な、なんて、こと……!!」
ユーディット「……彼がもう戻らないのを総司令官とあの女は知っている。彼から情報を受け取ったわたしも知っていた。……無能上司はジークくんとレナちゃんの同情心を刺激して、二人を自分の意のままに操ろうと、この件を黙っている。わたしは……あなたがルトガーさんを慕っていたのをジークくんを通じて聞いていたため、これを伏せていたの。……あの女に口止めされていたわけではないわ」
レナータ「…………。……そ、それじゃあ……あ……あ、あんたは、あたしを……気遣って……」
ユーディット「彼のことを黙っていたのは、すまなかったわね。あなたに傷ついてほしくなかったからなの。……明日、わたしは単独でその城へ侵入して悪魔を全滅させる。だが、悪魔が使っている城にはある仕掛けが施されている。……この城が残っている限りは、冥府から新たな悪魔を何度でも呼び寄せれる。魔の城は冥府と地上をつなぐ門なのよ。そして、城に悪魔が一匹もいなくなった場合、魔の城は冥府で蠢いている悪魔のすべてを自動的に地上へと召喚する。……逆にいえば、悪魔は冥府からいなくなる。冥府はなくなり、地上が冥府となる。……わかるかしら? 実に厄介な仕組みでしょう?」
レナータ「…………。……えっ、そ、それって……。……な、なら、ど、どうすれば……」
ユーディット「……わたしは城の悪魔を滅ぼし終えるのと同時に魔の城本体を解体し、冥府への門を封印するために自らの天使核を使用して、封印の儀を行う。あなたは何も考えずに悪魔を浄化しているのでしょうけれど……そもそも、わたしたち天使がどうして闇の塊である悪魔を滅ぼせるのかというと、この身に宿る天使核がそのちからを有しているため。大きな光、根源から分け与えられた神聖で光輝な火花なのよ、天使核は。……天使核を丸ごと用いて、地上に作り出される聖域は天使が使える最強の技。……これで悪魔はもう地上にはやって来れない。冥府への門となっている城も崩落して消える。……地上の人間は悪魔から守られる。……人間を守護したいわたしたち、天使の願いはここに成就する」
レナータ「!!!! ままま、待って、待って、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとぉ、ま、待ちなさいってば!! あんた、て、天使核を犠牲にして、魔の城を封印する……って、真顔で言ってるけど……あんたはどーなんのよ!?」
ユーディット「わたしは消失する。具体的には……あなたの邪魔者は明日以降、消えてなくなるわ。……レナちゃん、これがあなたへ伝えたかったことのひとつめよ」
レナータ「……な、なに言ってんのよ、あんた……気は……たしかなの!?」
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