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未来のために(5)
ユーディット「……ええ。これまでで、最も正しいと思っている。……今まで、いろいろと悪かったわね」
レナータ「わわ、悪かったなんて、謝らないでよぉ、あたしは気にしてないってぇ!! だいたい、そんなこと、聞いてんじゃないわよぉ!!! あんた、あんた、じ、自分の、そ、存在をなんだと考えてんのよ!! そんなあっさりと、消失するとか、明日以降いなくなるとか……どんなものにも、存在が必要なのよ! 不要な存在なんて、どこにもないのよ! て、天使なのに、あんた……頭がおかしいんじゃないの!! ……ヴェルクマイスターさんの命令なの!? 総司令官が立てた作戦なの?? それとも、メルツェデスが!? あ、あんたは、もっともっともっと、冷静なやつだと思ってたわ! ……あんたは腹立つけど、バカなことはしない、そんな……やつだと思ってたのに!!!」
ユーディット「……ヴェルクマイスターさんの、総司令官の命令ではない。当初、総司令官はわたしの立案に反対した。……しかし、これしか方法がないというのも、理解してくれた。……メルツェデスの作戦でもない。あの女は口が達者な色情狂で、色目を使って……ルトガーさんを利用していた。……あの女は悪魔との戦いに対する覚悟が足りないし、信頼に値する有能な上司であるとは、とてもいえないわ」
レナータ「そ、それなら……悪魔を全滅させるにしても、魔の城からは脱出するといいじゃないの!! 城だけを完全に壊すとか……。つまらない悪魔と気持ち悪い城を道連れに、あんたまで、消失することないでしょ!! ……違う!? あんたはあたしよりも落ち着いて行動できるんだから、わ、わかるでしょ!??」
ユーディット「……先程いったけれど、わたしが城の中にいる悪魔をすべて滅ぼし、城の外へ出てしまうと、仕掛けが機能してしまう。……冥府に悪魔は一匹もいなくなり、地上がそのまま悪魔の生息地となってしまう。そして、魔の城だけを壊すといったことはできない。人間がつくった建造物ではない。悪魔が作り出した闇のアイテムの一種だと、捉えるべきね。魔の城には独自の意志があり、内部にいる悪魔が発する波動を吸収している。……城を壊しても、その場に悪魔が近寄ってきたら、城は元通りに再生してしまう。天使一体が消失してでも……魔の城を封印し、悪魔自体が二度と地上へ現れないようにした方が、地上の人間にとっては得策で安全なのよ。……それほどに人間は弱いものなのだから」
レナータ「……だ、だからってぇ……」
ユーディット「……レナちゃん、あなた、わたしへ復讐したいでしょう。あなたの性格からして、そうでしょう。目障りだったわたしを痛めつける絶好の機会よ。外部へ音がもれないこの部屋の中で、無抵抗なわたしへ好き放題なさい。……殴ったり、蹴ったり、髪を引っ張ったり、爪で引っかいたり、あなたの必殺技をわたしへと叩き込んだりしなさい……」
「……え、えええ!?? い、いいいい、いいわよ、そそ、そんなこと、したくなぁいい!! いい、いいってばぁ!!」
「……??」
レナータの意外な反応にユーディットはきょとんとしている。
レナータ「……ああ、もおぉぉぉ〜〜う……。戦う気がない相手を一方的に攻撃するなんて、そんなこと、できないわよぉ!! 卑劣な人間じゃあるまいし! ……あ、あんた、なんで、どうして、そうなの!? どうして、どうして、あんたは、自分を大事にできないの!? ……あんたは一人しかいないのよ!! 他の誰かはあんたの代わりをできないのよ!! ……わ、わかる!?」
ユーディット「…………。ちがうわ。それは、違う。レナちゃん、あなたはわたしよりも大事な存在よ。……フフフ……」
レナータ「なな、なに笑ってんの? あんた、自分の言ってることと、状況の異常さを考えてみなさいよ!!」
ユーディット「……フフフフフ……レナちゃんって、可愛いわねぇ」
レナータ「笑わないで! ……ぉ、お、おかしいのは、あんたの方なのよぉ!!」
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