未来のために(1)

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未来のために(1)

 ……ん、ぅんんん……ふ、ふぇ???  暗い中でレナータは目を覚ました。  ……へ……っ……??  あ……あれ……なんで、ここで……あたし、寝てたの???  ここは……あーここ、知ってる……。  閉まっている扉とぼんやりと見える城壁を見上げたレナータは考えた。  ……いま、何時? 「……おわぁ!!!!」  時刻を知ったレナータは声を上げてしまった。  ……えぇぇぇぇぇぇっ!!??  ま、ま、まずいじゃない??  なになに?? ななな、なんなの??  ……んん、ん〜〜ん……よくわかんない……頭が……なんか……。  と、とにかく……帰らないと……メルツェデスに知られたら……面倒なことになるじゃないのよぉ!!  レナータはがばっと身体を起こすや、駆け出した。  その数時間前……レナータは城の通路を一人で歩いていた。  ……………………。  あーあー……ようやく、課業ってやつが……終わったなぁ……。  ……メルツェデスにこれをやるんだって言われて……ここに来て、ずっと……訓練、訓練……。  はあぁ〜〜〜〜〜……。  いつもいつも、同じようなことばっかり……。  数字が、数値が、高いとか、低いとか……。  悪魔が積極的に活動しないんなら、それはそれで地上にいる人間にしてみれば、平和でいーんだろうけど……。  あたしの活躍が……存在の価値が……ないじゃないの……。  闇を恐れない天使にしかできないこと、あたしらはやってるんだから……さ……。  つるつるしている床へ彼女の足音が響く。  長い通路を歩きながら、レナータは心の中でつぶやきを続けた。  あーあ……。  ルトガーさん……どこに行っちゃったんだろう……。  ……考えたくないけど……きっと、もう……ルトガーさんは……。  ……ルトガーさんのこと……メルツェデス……は……きっと知ってるはず……。  でも、何も言わないし……。  ……そのメルツェデスなんてさ……エルマーさん……と……妙に接近しはじめて……。  なんていうの……簡単にいうと……気色が悪い……。  あんなのと同じにはなりたくない……。  あーーーやだやだやだ、やだ……。  どうして、あんなコト、平然とできんの!?  メルツェデスにとって、ルトガーさんって、いったいなんだったのよ?  恋人なんじゃなかったの?  ……まったく、理解できないわよ!!  ……いまのあたしの心の支えは……ジークだけ……。  ああ……気になる……よ……ジークが……気になる……。  ……けど……そばには……あいつがいて……。  ……訓練が終わった後だってさ……二人で仲良く……手、つないで……帰って……。  昨日……も、そうだったじゃない……。  あいつ……手、つなぐどころか……ジークの腕に顔スリスリして……。  後ろ歩いてるあたしに見せつけてるんじゃないの、アレは!!  あーーーーもーーう……どーして、なのかしら!?  どーして、あいつなのよ、ジーク!!  どーして、あたしじゃないの!?  あたしもジークと一緒に帰りたい!!  手を握ったり、くっつきたいのに!!!  あたしもジークの隣に……いたいよ……一緒に歩きたいよ……。  それなのに、それなのに……。  ……あたし……あんたをいつの間にか……こんなに好きになっちゃってるのよ……。  自分でも……正直いって、困っちゃう……。  ……あたしも……愛されたい……。
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