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「はぁぁぁぁぁ???? ばっっかじゃないの? こんなの、隠す事じゃないでしょ! 言ってくれれば別に……気にしないのに。死んじゃこんなに集めても、意味ないじゃない!」
震える手で壁を思い切り殴る。ジンとした痛みも気にせず叫ぶ。
「なによ! 勝手に被害者面して、勝手に自殺? バッカみたい!」
目頭が熱くなる。気付けば視界が霞んで、ぽたりと水滴が落ちた。
「私は……彼女でしょ? なんで何も言わないで死んじゃうのよ」
私はその場で蹲った。
「……ふぅ。もう、いいや」
私はひとしきり泣き喚くと、それ以上は何も言わず、その場に落とした缶バッジを拾った。
結局、私は彼の遺品を全て引き取る事にした。ポスター、フィギュア、グッズ。諸々合わせて数百にも至る品々は私の部屋に置くには多すぎた為、隣の部屋も借りてそこを物置にする事にした。
お義母さまとはまだ交流が続いている。
その日はお義母さまが私の部屋に来ていた。
「そういえば、息子のその……残したものはどちらに?」
私の淹れた紅茶を受け取り、辺りを見回す。部屋の中は理路整然として、無駄な物は一切置かれていない。
「あぁ、あれならここに」
私は箪笥から缶バッジを取り出した。あの時拾ったものだ。
「あら、他のは?」
「あぁ、全部売りました」
「え――」
お義母さまの目が見開かれた。
「そ、そうよね。あんなにあっても邪魔だものね」
声が震えている。もしかして必要だったのだろうか? 私にはその気持ちは理解出来なかった。
「必要でしたか?」
思わず口に出てしまう。
「そ、それは……」
お義母さまは顔を俯かせてしまう。
「今更良い人ぶったって、戻って来ないんですよ? だったら、わざわざあんなもの。家に置いとく意味も無いでしょう?」
どれだけ泣こうとも、悔もうとも、彼は帰って来ない。だから私は私を貫くことにした。
「それに、彼が死ぬ思いで集めたコレクションを売ったと聞いたら、もしかしたら恨んで枕元に立ってくれるかもしれませんしね」
そういって私は目を細めて笑った。
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