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図書館に向かったのには訳がある。医療関係の本は、普段では中々手に入らないが、図書館には置いてある。要は一般の人でも手にすることが出来るからだ。
重厚な石造りの建物が視界に入ってくる。
この街の図書館だ。
建物の中に入ると、静寂と言う名の冷やりとした空気に包まれる。
医療の専門のコーナーへと行く。
理解不可能な難解な書物が並ぶ中、『人体解剖図』と言うタイトルの本が目に入る。
早速、手に取ってみる。
正にタイトル通りの内容だった。人体の仕組みが、誰が見ても手に取るように分かる図柄が豊富な書物だ。
これを見れば、人体の仕組みが理解できるが、実際やってみると、自分で想像していたように上手くはいかないだろう。
だから、性器だけを正確に切り取ることが出来ず、周辺の臓器も一緒に切り取ってしまうと言う、雑なことになったのだ。
訓練を受けた医者なら、そうはならないだろう。
俺は受付に行き、この本を持っていき、借りる手続きをとる。
貸出簿の他のページを見る。
事件が起きた日辺りで、この本を借りた人間を調べるためだ。
このような本を借りるのは、医療関係者が殆どだろう。借りた人間達を調べていけば、怪しい人間を炙り出す事ができる。
事件が起きた日の直近で借りている人間は、ルーセントと言う名の者一人だった。
受付の人間に記者証を見せて尋ねてみることにした。
借りる人数は少ない。覚えているかもしれない。
「この本を以前に借りた人がいるようだけど、どんな人だったかな」
「そうですね~。若い男性の方だったかと思います」
「こんな感じの人かな」
俺は、かつて売春宿の裏口から出て行った男の写真を見せる。
「どうでしょう。感じと言うか、雰囲気はこんな感じだったような気がします」
首を傾げなら答える受付の女性。
これ以上は無理か。
下手に頑張られてしまうと、記憶をイメージから捏造されてしまう恐れがある。
図書館を後にする。
次は事件があった売春宿に用があるからだ。
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