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二回目の事件の記事が掲載された新聞が発行された。かなりの売り上げと反響があった。警察から報道規制の話は来なかった。
警察が何処まで捜査を進めているかは分からない。刃物を扱う職業に就いている人達を、徹底的に調べている事は掴んでいる。
職場の異常な程の盛り上がりは相変わらずだ。
まるで三回目の猟奇殺人を期待しているのかと、勘違いされてしまうかのような雰囲気だ。
我々はまた夜、娼婦達が仕事場にしている職場を見張る事にした。犯人に関しては、こいつで間違いない自信があったら捕まえろとの指示まで出てしまう状況だった。
一人では危険過ぎるだろう。相手は刃物を持っている殺人鬼だ。写真を撮ることすらかなりの危険を孕む。
この件については、真剣に考えるのを止めた。
それと、二度目の事件について、売春宿を経営している女性の言っていた事は、除外することにした。
犯行の手口からして、二度にわたる猟奇殺人事件は同一犯と見て良いだろう。
一人の娼婦が数か所の売春宿を利用していることから、シャーロットとカルローナに多少の接点はあったとしても、二人に対してあそこまでの行為に及ぶ憎悪を抱く娼婦仲間がいるとは考えにくい。
犯人の目的は他にある。客を取られた恨みであそこまでの凶行に至るとは思えない。
女性に対して何か深い怨念じみた物。被害者二人に対する異常な程の恨み。
ただ、娼婦達の口は異様に固い。
真実を手繰り寄せるには、かなりの労力を要する感じだ。
警察は刃物を取り扱う職業の人達を必死に当たっているようだが、これも、警察と言う組織力をもっても一筋縄ではいかないだろう。
我々の考えでは、医療関係者という考えが有力だが、その線に絞り込むのもどうだろうか。医者がわざわざ危険な街にまで繰り出して、娼婦を抱きに来るとは思えない。高級なコールガールを呼ぶくらいの金は持っているだろう。それに、あの二人に相当な恨みを持っている医者がいるとでも言うのだろうか。
その線は考えにくい所だが……。
気になるのは黒いコートを着た男だ。
一度目の事件でも目撃されている。
ただ、どのような男だ。一度目では若い男。二度目では中年の男。
絞り込めない。
その辺をもっと詳しく調べ上げれば、犯人に少しは近づけるかもしれない。
考え抜いても、これ以上の進展はなさそうだ。俺は、担当となった建物の見張りに出向くことにした。
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