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俺は担当となった売春宿の近くに待機する。今回は黒いコートを着た人間に着目して、写真を撮る事にした。
娼婦と一緒に建物の中に入っていく黒いコートを着た男を何枚か撮ったが、正面からは撮れていない。
顔が分からないかもしれない。
数少ない手掛かりの一つにはなるだろう。
建物に入っていく客と娼婦が途絶えた。満室になったのだろう。
暫くして、客と娼婦が何組か出てきた。
やるべきことをやって金を払い終われば、関係は終了だ。一時の快楽の為に、今夜もどれだけの金が動いているのやら。
虚しさしか感じなくなってきた矢先、悲鳴が響くと同時に建物の中で騒ぎが起こっている事が分かった。
周辺の写真を撮り、建物の中へと駆け込む。
騒ぎ声のする二階へと駆け上がり、廊下に出る。
数人の女性達が部屋の前で立ち竦み、オロオロとしている。
俺は女性達を掻き分け部屋の中に入っていく。
深紅に染まった汚れた感じの白いシーツ。
ズタズタに切り刻まれた顔面。
切り裂かれた喉。
下腹部まで切り裂かれた腹部。
体外にはみ出している臓器。
空洞となっている下腹部。
やられた……。
女性達に直ぐに警察を呼ぶように話し、俺は写真を何枚か撮る。
事件が分かったのは、時間になっても出てこないので、心配になって部屋を見に来たら、このような状況になっていたとのこと。
前回と同じか。
犯人は誰にも気が付かれずに、上手く逃げられている。
どう言う事だ。
見た目か。
黒いコートを着た紳士風の男。
誰がどう見ても怪しまれないから、堂々とその辺を歩いていても、誰も気が付かないと言う事か。
周辺にいた何人かに話は聞いたが、結局は前回と同じ程度の事しか確認できなかった。
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