事件

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 警察が来る前に建物を出て、周辺の写真を撮り、俺は会社に戻る。  我々はまた警察よりも先に、事件の現場を抑えたことになった。上の判断では警察から報道規制がでるまでは、警察の発表を待たずに、記事を載せる方針に変わりはない。  今回の事件についても、写真が出来上がれば、直ぐに新聞に掲載され、発行される。  記事は書いたが、代り映えのないものとなってしまった。現場で目撃された、黒いコートを着た紳士風の男の事についてもしっかりと記載しておいた。  数日後、写真が出来上がり、新聞は今回の事件を載せて発行となった。  売り上げはかなりのものとなった。反響も今まで以上だ。  ここまで話題になっているのに犯人について、全く何も掴めていないのだ。  怨恨の線なら、人間関係を捉えれば、何とかなるが、その線はかなり薄い。  過去の歴史を見てみても、狂気によって起きた事件の犯人は中々特定されず、大量の犠牲者を出してしまった実例は幾つもある。  こちらとしても、これ以上の犠牲者を望んでいる訳ではない。  事件の解決に繋がる情報を掴み、警察に提供をしたいのだ。  惨殺された女性の姿はもう見たくない。  現場の写真を何度も見返した。  黒いコートの男……。  昨日も何人か見かけたが、確証は得られていない。  現場の写真に写り込んだ全ての黒いコートの男が、怪しいと言う事になるのだ。  季節も冬だ。  コートを着用している男は沢山いる。  白黒写真では色の判定すら困難になってしまうのだ。  考え込んでしまう中、一通の封筒が目に入る。  差出人は不明だが、良くあることだ。  特に深く考えずに封を切る。
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