15人が本棚に入れています
本棚に追加
警察が来る前に建物を出て、周辺の写真を撮り、俺は会社に戻る。
我々はまた警察よりも先に、事件の現場を抑えたことになった。上の判断では警察から報道規制がでるまでは、警察の発表を待たずに、記事を載せる方針に変わりはない。
今回の事件についても、写真が出来上がれば、直ぐに新聞に掲載され、発行される。
記事は書いたが、代り映えのないものとなってしまった。現場で目撃された、黒いコートを着た紳士風の男の事についてもしっかりと記載しておいた。
数日後、写真が出来上がり、新聞は今回の事件を載せて発行となった。
売り上げはかなりのものとなった。反響も今まで以上だ。
ここまで話題になっているのに犯人について、全く何も掴めていないのだ。
怨恨の線なら、人間関係を捉えれば、何とかなるが、その線はかなり薄い。
過去の歴史を見てみても、狂気によって起きた事件の犯人は中々特定されず、大量の犠牲者を出してしまった実例は幾つもある。
こちらとしても、これ以上の犠牲者を望んでいる訳ではない。
事件の解決に繋がる情報を掴み、警察に提供をしたいのだ。
惨殺された女性の姿はもう見たくない。
現場の写真を何度も見返した。
黒いコートの男……。
昨日も何人か見かけたが、確証は得られていない。
現場の写真に写り込んだ全ての黒いコートの男が、怪しいと言う事になるのだ。
季節も冬だ。
コートを着用している男は沢山いる。
白黒写真では色の判定すら困難になってしまうのだ。
考え込んでしまう中、一通の封筒が目に入る。
差出人は不明だが、良くあることだ。
特に深く考えずに封を切る。
最初のコメントを投稿しよう!