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早速、事件の現場に戻り、調査を始める。
惨殺された女性の状況からして、犯人は彼女の客だ。殺されて間もない状態で発見をされている。あの建物は売春宿で間違いなろう。お互いの素性を知られたくないから、俯きながら女性と一緒に部屋に入っていくし、他人をジロジロとは見ない。
どんな客だったのか……。
まずは、あの売春宿を利用している娼婦から調べていくか。
売春宿に行く。
夜とは違い、今にも倒産でもしてしまいそうな雰囲気が漂う。
ドアをノックする。
年配の太った女が出てきた。
「私はA新聞社の記者。ローウイック。ここの経営者に聞きたいことがあってね」
記者証を見せながら、話しかける。
「またかい。どうせ昨日の事件の事だろう。さっき警察に話したんだから、そっちに聞いてもらいたいね」
「そうはいかないんですよ。最近、我々は警察に煙たがれていましてね」
「つまらない事件をほじくり返すからじゃない」
この女、ある程度は新聞を読んでいるな。我々が調べて記事にした冤罪事件の事をいっている。
あの記事を書いたのも俺だ。
「ほじくり返しではないですよ。真実を追求しているまでの事です」
笑みを浮かべながら、自信をもって答える。
「で。何が聞きたいんだい」
女はかったるそうに聞いてくる。
「昨日の事件の被害者の名前は」
「シャーロット。何処にでもいるような女だよ」
「何処にでもいるような娘がどうして娼婦を?」
「野暮な事を聞くね。こっちはいちいち理由なんて聞かないよ。やる気があれば雇う。それだけだよ」
「彼女は客とトラブルを起こしたことはあるのかい」
「客とのトラブルなんて日常茶飯事だよ。それはどの娘にもあること。いちいち覚えていないよ。そうだね。事件の日のあの娘の客は黒いコートに身を包んでいて紳士のような人だったね」
「紳士。どんな感じの人だったかな」
「だから。紳士のような人。あ~。そうだね~。身なりが良かったから、金持ちかもね」
「歳はどのくらいの人だったかな」
「そんなの覚えていないよ。ま~。年寄じゃなかったね」
「事件に気が付いたのは誰?」
「私だよ。予定の時間を過ぎても部屋から出てこなかったからね。さっさと終わして、次の客をとるよう言いにいったら、あの娘は血だらけになっていたってことさ」
「貴方はここの受付口にずっといた訳だ。シャーロットの客が出ていくところとか見なかったのかい」
「ここにずっと立っている訳じゃない。カウンターの奥の控室で休んでいる時もある。その辺の事は知らないね。とにかく時間を過ぎても出てこないから、部屋の確認に行ったらあの状況だったってこと。もういいかい!」
女はドアを乱暴に閉めた。
やたらと下手糞な歌らしきものが聞こえてきた。あの女が歌っているのか。二度と聞きたくないな。
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