事件

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 他の娼婦にも確認は取ったが、有力な情報を得る事は出来なかった。  写真の現像も終わり、記事も書き上げた。警察の記者発表終了後には新聞は配られる。警察に多少は配慮したつもりだ。  俺は何食わぬ顔をして、警察の記者発表に参加する。  配布された資料と説明内容を聞いたが、特に目新しいものは感じなかった。  他の記者は今回の猟奇殺人件に熱心に手を上げて、質問をしていたが、俺は特に質問をする気もない。事件を警察よりも先に発見し、既に調査を開始していたのだから、当然だろう。 「ローウイック。久しぶりだな」  声を掛けられ振り向く。刑事のブルボッサだ。鋭い目つきにいかつい顔立ち。狙った獲物は決して逃さないような雰囲気。 俺は軽く挨拶をして、この場を去ろうとする。 「待てよ。全てを知り尽くしています。みたいな感じだな。聞き込みをやっていて、写真を撮っていた胡散臭い奴がいたと聞いたが、お前だろう」  今度は厭らしい笑みを浮かべてきた。 「何でも知っているぞ。みたいな感じはお前だろう。俺は地道に調べ上げた事を記事にするまでだ」  さり気なく言い返す。 「もう新聞が配られているそうじゃないか。こっちが発表していない事までしっかりと書かれているそうじゃないか」 「調査した結果を率直に書いたまでだ」 「率直か。また推理小説の読み過ぎまがいの記事で、こちらの手を煩わさないでくれよ」 「推理小説の読み過ぎまがいの犯人捏造に疑問を呈したまでだ」  厭味に満ちた言葉をそのまま返してやった。 「まっ。せいぜい頑張ってくれよ。俺達の足枷にならないでくれよ」  息を洩らすような感じの笑みを浮かべるブルボッサ。  俺は軽く手を振り、この場を去る事にした。俺が以前記事にした冤罪事件の担当はアイツだったな。  そんな事を頭の中に浮かべながら、会社に戻った。
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