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「本当に外の世界の者たちは心が豊かだなあ」
物言わぬ花しかいない庭園では言葉が返ってくることはない。此処は時の狭間と呼ばれる場所。この地には姉のアインスと二人で住んでいるが、彼女は外の世界に行っているから今はいない。二人は人と呼べる代物ではなく、人の心を食べて動く人形と称するのが一番近しいであろう。
「嗚呼、また奴らが現れた」
何処かの世界に言の刃という化け物が現れた。奴らは人の感情を増幅させて暴走させる。そうすると人は狂い落ちて意図せずに多くを傷つけ、その自責の念で自ら死を選んでしまうのだ。
人の心を食べる姉弟にとって、人の心は何よりも愛おしいもの。それを壊すものは認めない、許せない。
「さあ、行こう」
立ち上がると同時に空間が歪む。奴らの元へ飛んで、殺して、人の心を集めよう。大丈夫、心を集めても人が心を失うわけではない。ただその増幅してしまった心だけを抜き取って、集めるのだ。
今宵は幾つ心を集められるだろうか。
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