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「お前、良い匂いする」
言われた私はばっと身を離した。
「セクハラ!」
「褒めてるのに」
彼の声は不服そうだったが、それどころじゃない。
私は彼の手から仮面をひったくり、慌ててつけた。赤くなった顔を見られたら恥ずかしくて恥ずかしくてあの世に行ける。
「結局つけるのかよ」
「いいじゃん別に」
「いいけどさ……行こうぜ」
かぼちゃを被った彼が手を差し出してきて、私は戸惑う。
「ほら、これだけ人がいたらはぐれるだろ」
「うん……」
私がおずおずと握ると、彼はしっかりと握り返して来た。
温かさと力強さに、胸がきゅんとしてしまう。
「今日は楽しもうぜ!」
彼の明るい声に、私はただ黙って頷いた。
不思議なことに、ただ歩いているだけなのにすごく楽しかった。
彼がいろんな話題をふってくれたおかげだとは思うけど、それだけじゃない。
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