トリックオアトリートな日樫くんがあまくなる夜

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「ちょっと座ろうぜ」  彼に言われて、少し離れたところにあるベンチに一緒に座る。 「お前とはゆっくり話したかったんだよね」 「なにを?」  しょっちゅう軽口を叩き合って、雑談レベルではよく話をしているけど。 「俺が営業成績一位なのはお前のおかげだからさ、きちんとお礼を言わないとってずっと思ってた」 「あなたが努力した結果でしょ。私はなにもしてないよ」 「お前が頑張ってるのを見て、負けてられないって頑張ってきたんだ。だからお前のおかげ」 「言い過ぎよ」  答えながら、どきどきしていた。私と同じことを彼が思ってくれていたなんて。 「いつも真面目に仕事に取り組んでるの、尊敬してる」 「そんなこと言ってもお菓子はないよ!」 「わかってるって」  彼は苦笑した。 「俺、ちゃらいじゃん。だからお前みたいな真面目なやつに憧れがあってさ」  驚いた。こんな私に憧れてもらえる部分があったなんて。 「面白みがないとか遊び心がないとか言われるけど」 「そんなこと言う奴は俺が抹殺する」  日樫くんが真顔で言うから、思わず笑ってしまった。  彼はつられたように楽しそうに目を細め、ぼそっとつぶやく。 「やべ……やっぱ好きだ」 「え!?」  私は驚いて声を上げた。
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